世界的にデジタルビジネスへのシフトが喫緊の課題となっている中、動画コマースは顧客への有用なアプローチの1つになり得る。しかし、動画を1つのチャネルとして上手く活用できている企業はまだまだ少ない。「未来の動画コマース」の在り方を模索するにあたり、消費者行動に沿った先進的な動画テックとしてパロニム株式会社が提供する『”触れる”動画サービス「Tig」(ティグ)』を活用し、動画コマースの本質的な価値や未来の動画コマースの在り方について検討を開始した。

2021年12月21日

ニューノーマル時代における消費行動の変化

COVID-19の影響でデジタルシフトが加速する中、ECを中心としたオンライン消費が急増している。オンライン決済プラットフォーム、ペイパルが発表した「2021年ペイパル海外通販レポート」※によると、新型コロナウイルスの感染拡大により世界におけるオンライン小売売上高は前年の3兆3500億ドル(365兆1500億円、1ドル=109円換算)から4兆2800億ドル(466兆5200億円)へと急増した。このような顧客の消費行動の変化に伴い、世界的にデジタルビジネスへのシフトが喫緊の課題となっている。

ECにおける顧客とのデジタル接点は様々存在するが、近頃は動画を用いたコンテンツ(例:動画コマース、ライブコマース)を通じて顧客へ効果的に訴求したり、関心を引き出したりする施策が見られるようになった。「動画コマース」「ライブコマース」を例に挙げたが、ここでは「動画コマース」「ライブコマース」を下記の通り定義する。

動画コマース:顧客の好きな時間に、企業側が顧客に対してワンウェイのコミュニケーションでコマースに繋げる手法

ライブコマース:時間を特定し、1対多のインタラクティブなコミュニケーションでコマースに繋げる手法

上記の通り、ライブコマースはインタラクティブなコミュニケーションに強みがある一方、ライブコマースならではの業務・機能の準備が必要となり、導入における初期投資の負荷が高くなってしまう。一方で動画コマースは、各企業が既存の業務・機能を活用して発信でき、スモールスタートで開始できるため、大きな初期投資が難しい企業にとっては有用なアプローチの1つになりうる。動画コマースが加速する今、改めて現在の動画コマースの課題とあるべき姿について考え、顧客の消費行動の変化に合った「未来の動画コマース」の在り方を築く必要がある。

※2020年12月~21年2月に成人を対象としたオンライン調査。13市場(日本、中国、香港、シンガポール、インド、オーストラリア、米国、英国、フランス、ドイツ、ロシア、メキシコ、ブラジル)、1万3000人の消費者を対象に、各国内と海外のオンラインショッピングの利用方法について聞いた。

動画コマースの課題とあるべき姿

動画コマースの価値は「動画を視聴した消費者が抱く感情を瞬時に捉え、関心を継続させ、購買行動に繋げること」だと考えるが、大半の企業が「動画を単なる商品説明素材の1つ」として活用しており、動画を1つのチャネルとして活用できている企業はまだまだ少ない。
また、動画を1つのチャネルとして活用できている企業においても、大半の動画コンテンツが、訴求から商品を選ぶ過程に複数のアクションを必要としている。例えば、動画を見た後に、消費者が自身で対象のURLを探し、遷移する導線となっている。これでは、動画コンテンツを通じてブランドや商品への興味を醸成することができても、商品ページまでの導線が遠いことから、離脱に繋がりやすい。よって、現在の動画コマースを更に高度化させるためには、動画を商品説明素材の1つとして捉えず、1つのチャネルとして活用していくことと、そのチャネルとしての動画コンテンツを通じてブランドの価値観・ストーリーの伝達を行うとともに、共感者へ迅速に初回利用を促し商品・サービスそのものの体験へ繋げていくことが重要である。

上記、「未来の動画コマース」のあるべき姿を実現するために、パロニム株式会社の『”触れる”動画サービス「Tig」(ティグ)』を用いて、狭山茶農家 ささら屋、徳島インディゴソックスと動画コマースのPoCを開始した。

”触れる”動画サービスTigとは?『知りたい情報は「さがす」から「さわる」へ』

Tig

“触れる”動画サービス「Tig」とは、①映像の中の気になる対象物をタップすることで情報をストックすることができ、②好きなタイミングでストックした情報の詳細ページへとシームレスに遷移することが可能なインタラクティブ動画サービスである。

ユーザーは対象物をタップするだけで知りたい情報を簡単に入手でき、企業側はユーザーのタップポイントから「Tig」の効果測定や様々な顧客分析が可能となる。また対象物の価値観・ストーリーの伝達を行うとともに、迅速に初回利用を促し商品・サービスそのものの体験へ繋げていくことができるため、TIG導入により大幅に購買率が向上した事例もある。

Deloitte Digitalが過去に実施した分析事案やマーケティング施策を踏まえ、より効果的な「Tig」の適用条件や適用方法についてPoCを通じて検証中である。PoCにおいては、動画そのものが何を目的としているか(認知/検討/行動のいずれか)、視聴デバイス(PC/タブレット/スマホ)は何を想定するか、動画はどれくらいの長さか(30秒/1分/3分/・・・以内)、等の条件によって動画を分類した上で、その分類別に最適な「Tig」の適用方法は何かを分析する。これにより、TIG導入の『成功の法則』を定義することを目指す。

『おいしいお茶をくらしの中に広めていきたい』狭山茶農家 ささら屋とのPoC

狭山茶農家 ささら屋

狭山茶農家 ささら屋は、江戸の昔より続く由緒ある狭山茶農家である。茶葉の生産をはじめ、狭山茶関連製品の販売まで、総合的な活動を行っている。そのようなこだわりを持った製品を生産するささら屋にとっては、大切に育てた茶葉の生産工程などの価値観・ストーリーの伝達を行うことで、消費者の共感を生み、商品・サービスそのものの体験へ繋げていくことが重要となる。その導線を実現すべく下記3つの施策においてPoCを行っている。

1.自社ECでの有用性検証
くらしの中でお茶を淹れて飲むシーンが描かれている動画に対して、動画内の「Tig」箇所をタップすると自社ECの商品購入ページへシームレスに遷移する仕掛けを用意した。

日常の家族とお茶を飲み微笑むシーンを通じて、狭山茶の価値・世界観や、お茶を淹れて飲む時間の幸福感といったストーリーを消費者へ伝達する。その価値観に共感した際、「Tig」をタップするだけで、シームレスに同社のECサイトへ遷移することが可能となる。購買率の変化等、「Tig」の有用性を検証中である。
動画リンク:こちら

2.提携先他社ECでの有用性検証
ささら屋は生産者と消費者を繋ぐECプラットフォーム「鮮菜」を利用している。当サイトの生産者紹介ページに掲載されているささら屋の商品PR動画に「Tig」埋め込みを行い、「Tig」箇所をタップすると「鮮菜」の商品購入ページへシームレスに遷移する仕掛けとなっている。モノが溢れる今、モノづくりを行う過程での生産者の想いやストーリーを伝えることが重要となるが、この取組みを通じて、自社ECサイトだけでなく、生産者と消費者を繋ぐECプラットフォームでの「Tig」の有用性を検証中である。

3.キャンペーン施策との連動性検証
「Tig」の遊び要素を季節限定キャンペーンに活用する取組みも実施している。遊び要素を入れることで動画再生ハードルを下げ、動画を楽しみながら狭山茶を知ってもらい、実際に飲んでもらい、ファンになってもらうというサイクルが回るか、「Tig」の有用性を検証中である。(参加費無料 ※2021年12月末まで)
ささらほうさらお宝探し

『県内・県外へファンを増やしていきたい』徳島インディゴソックスとのPoC

徳島インディゴソックス
徳島インディゴソックスは四国アイランドリーグPlusに所属するプロ野球チームである。COVID-19の影響で売上が減少するスポーツビジネスにおいて、試合以外の場面でも情報を発信し、興味を持ってもらい、ファンを増やしていくことが重要である。その導線を実現すべく下記3つの施策においてPoCを行っている。

1.製品訴求における有用性検証
選手のトレーニング動画に登場する球団で使用しているトレーニング器具に「Tig」の埋め込みを行い、「Tig」箇所をタップするとトレーニング器具の購入ページへシームレスに遷移する仕掛けを作成した。動画を通じてトレーニング器具の有用性や価値、使用するに至ったストーリーを消費者へ伝達する。その価値観・ストーリーに少しでも共感した際、「Tig」箇所をタップするだけで、シームレスにトレーニング器具の購入ページへ遷移することが可能となる。購買率の変化等、「Tig」の有用性を検証中である。

動画リンク:こちら

徳島インディゴソックス/Tig

2.地元特産品の販売に向けた有用性検証
地元阿波市とコラボし、徳島インディゴソックスのファンに向けて地元阿波市でとれた野菜・フルーツ等のおいしさを知ってもらうためのキャンペーンに「Tig」動画を活用する。阿波市でとれる特産品のストーリーを消費者へ伝達し、その価値観・ストーリーに共感した際、「Tig」箇所をタップするだけで、シームレスにキャンペーン応募ページへ遷移することが可能となる。購買率の変化等、「Tig」の有用性を検証中である。

動画リンク:こちら

徳島インディゴソックス/Tig

3.YouTubeチャンネルの有料会員増に向けた有用性検証
徳島インディゴソックスは独自のYouTubeチャンネルを開設している。その中で、有料会員のみに選手のプライベートな部分を披露する動画を公開している。選手が登場する動画に「Tig」の埋め込みを行い、「Tig」箇所をタップすると有料会員への登録ページへシームレスに遷移する仕掛けを作成した。各選手のキャラクターやストーリーを伝え、県内はもちろん県外にもファンを増やしていくことが重要となるが、この取組みを通じて、有料会員増に寄与できるか「Tig」の有用性を検証中である。

未来の動画コマースとは

冒頭述べた通り、動画コマースは「動画を視聴した消費者が抱く感情を瞬時に捉え、関心を継続させ、購買行動に繋げること」を実現できる、顧客との有用なコミュニケーション手段の1つであるが、「単なる商品説明素材の1つ」としての活用にとどまり、1つのチャネルとして認知・活用できている企業はまだまだ少ない。

今回「未来の動画コマース」の在り方を探索するにあたり我々が「Tig」に着目したのは、商品・サービスの価値観・ストーリーの伝達を行うとともに、迅速に初回利用を促し、顧客体験につなげるという、消費者行動に沿った動画テックとして有用であると考えられたからである。

動画コマースはCOVID-19を契機として消費者購買接点の萌芽であるというより強い認知が得られた。今後、購買における1つのチャネルとして受容、高度化が加速するのか、今回のPoCを機に、動画コマースの未来について模索していきたいと思う。

プロフェッショナル

原 裕之

原 裕之

デロイト トーマツ コンサルティング合同会社 ディレクター

外資系コンサルティング会社を経て現職。CRM領域を中心にバリューチェーン全体の業務知識、End to Endのプロジェクトマネジメントスキルを有する。 近年はデジタルを起点とし業界の枠を超えた新規事業創出プロジェクトや、DX(デジタルトランスフォーメーション)、D2C(EC)案件を数多くリード。


プロフェッショナル

田村 美佳

田村 美佳

デロイト トーマツ コンサルティング合同会社 シニアコンサルタント

広告事業を営む会社にて、自然言語処理を活用したチャットBOTの導入や、需要予測ロジックの構築・運用等を経験し現職。現在はEC戦略やデジタルを活用した営業改革のプロジェクトに従事し、デジタルマーケティング領域の案件を得意とする。

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