Deloitte Digitalは離島ならではのデジタルトランスフォーメーションを支援している。

島根県隠岐郡にある隠岐四島の一つ、ブランド牡蠣、高校生の島留学、魅力的な人が集まりつながる不思議な力を持った場所、「ないものはない」島、ご存知の方も多いかもしれない「海士町」。

私たちは、この海士町役場とともにこの地域課題の把握や施策の効果測定に向け、地域情報のデータ化と活用に向けた見える化を進めている。この活動の報告はまた別の場を借りることとし、今回は、海士町を日々ご支援する中で知る(感じる)、離島におけるデジタル活用状況についてお話したい。

2021年3月12日

第1章 島の日常に浸透するデジタル

皆さん(特に都心部に住む方々)がイメージする、離島の生活とはどのようなものであろうか。

  • 海、山といった自然にあふれ、地元の特産品が食卓に上がり、毎日の時間がゆっくり流れている
  • 移動は自家用車が中心で公共交通のバスやタクシーもあるが本数・台数が限られており、交通の便は決してよいとは言えない
  • 町にはコンビニやスーパーの代わりに商店があるが、夕方には閉まってしまう
  • 映画やライブハウスなどは無く、夜は家族とTVを囲んで団らんしたり、仲間といつもの居酒屋で語り合ったりして時間を過ごす

このようなイメージではないであろうか。ただし、海士町の役場の皆さんや町の人々と話をしていると少し、そのイメージが変わってくる。

  • 商店で買い物もするが、それとは別に欲しいものの多くは(割と高頻度で)有名ECサイトで買い物をし、翌日には欲しいものを手に入れている
  • 映画配信サービス(Netflixなど)を契約し、家族団らんの中心にして(もしくは夜な夜な一人で)日々楽しんでいる
  • 動画投稿系サイト(YouTubeなど)やミュージック系サブスクで好きなアーティストの最新の曲やMVをいち早くチェックしている
  • 家族同士、仲間同士の連絡の取り合い、気軽な会話は当然SNSのコミュニケーションツールを駆使している

これらデジタル要素が、上述の離島の生活イメージに見事に溶け込んでいる、いやむしろ必需品化していると感じるのである。ユーザーの不便を便利にするといった力がデジタルにはあることを考えれば、都心ほど便利でない離島のほうが、よりデジタル活用に向けて積極的なのかもしれない。

第2章 リアルの感動と島の課題 ~スポーツ交流を通じて~

さて、このような海士町でもう一つ、Deloitte Digitalがご一緒したイベントがあり、その内容をお伝えしたい。
2020年10月某日、海士町が主体となって隠岐3島(島後島、中ノ島、西ノ島)が連携し、元プロ野球選手2名を迎えスポーツ交流が開催された。同島でも昨今のコロナの影響でイベントの自粛が続いていたが、少しずつ日常を取り戻そうといった動きも受け、感染防止策を徹底したうえでの実施となった。
来島したのは、東京ヤクルトスワローズで左の中継ぎとして活躍し、現在はデロイト トーマツにてスポーツビジネス スペシャリストとしても活動する久古健太郎と、劇的な代打サヨナラ満塁ホームランが記憶に残る鵜久森淳志氏(いずれも東京ヤクルトスワローズでプレー)である。両氏は3島の各地域で島の子ども達への野球教室や、島民に対する講演会を行った。はじめは緊張の面持ちで指導を受けている子どもが多かったが、生のプロスポーツ選手のプレーを目の当たりにし、最後は興奮してサインを求める輪ができるなど盛況のうちにイベントは終了した。


子どもにボールの握り方を伝える久古


野球を始めたばかりの子どもに投げ方を教える鵜久森氏

今回、講師として参加した久古と鵜久森氏は今回の取り組みを終えて、以下のように語ってくれた。「プロスポーツ経験者の訪問によって、離島にこんなにもインパクトを与えられることを今回初めて知り、“スポーツの力”を改めて感じることが出来ました。今回の取り組みを打ち上げ花火で終わらせるのではなく、より大きなインパクトを生み出すにはどうすればよいか継続的に考えていければと思います。」(久古)「知り合いのスポーツ選手に今回の訪問のことを話し、プレーを見に来てもらうばかりでなく時には自ら訪問することの大切さを伝えていければと思います。」(鵜久森氏)


サインをもらってご満悦の様子

今回のイベントの企画者である海士町役場の小林氏に企画の趣旨を伺った。「現在、海士町を含む島前3町村は、オリンピック・パラリンピック東京2020大会において、ミクロネシア連邦のホストタウンとなっており、隠岐の島町を含めた隠岐4島で共生社会ホストタウンでの登録を目指しています。共生社会ホストタウンの登録を達成するには、町民の心のバリアフリー化が課題となっています。(心のバリアフリー:障害を持った方々への先入観や来島者に対する過度な恐怖心をなくすこと、島内での円滑なコミュニケーションができていること等)新型コロナウイルスが流行したこともあり、未だ感染者ゼロの隠岐では「一人目になりたくない」「最初の感染者を出したくない」という意識が根強くあり、イベントを全て中止するなど過度な恐怖心が根付いてしまっていました。今回のスポーツイベントを通じて、こうした気持ちをやわらげ、心のバリアフリー化に向けて、コロナ禍でも開催できるイベントづくりの模索や、隠岐4島間のつながりの強化を図れればと考えています。」(小林氏)
開催を経て、海士町役場の高田氏は成果と今後について以下のように話す。「今回のように多くの市町村を巻き込んだイベントはほとんど記憶になく、島間の連携強化に向けていい機会となったと思います。また島では“生” “本物”といったリアルに出会えることが滅多にないため、島の子ども達にリアルの体験をしてもらえたことは、島の目標でもある『魅力あるひと』の育成に寄与する取り組みとなったと感じており、今回の取り組みをきっかけに、今後もスポーツというリアルの体験や感動を通じて島を盛り上げていきたいと考えています。とはいえ、島という立地上、頻繁にこのような機会を作るのは難しいと感じており、そこは『工夫』が必要だと考えています。」(高田氏)


海士町の高田氏(左)と小林氏(右)

今回のイベントを通じて、子ども達の姿からリアルの実体験でしか得られない価値を改めて感じるところとなった。一方で、高田氏の語る島の物理的ハンデに対する「工夫」、それをデジタルで補えないだろうか。リアルの感動とデジタルの感動を繋ぐことで相乗効果を発揮していくことができれば、立地的な制約によって特定のモノ・コトにリーチしづらい地域の人々にも大きな感動を届けることができるはずである。野球教室の中で子ども達に好きな選手を聞いたところ様々な選手の名前が返ってきて驚いた。デジタルを通じて島の子ども達はたくさんの情報を得ており、すでにリアルとデジタルの感動を繋ぐ素地はあると感じた。

第3章 利便性のデジタルと温かみのリアルの間で未来を考える

さて、このようなデジタルツールやデジタルサービスを上手に活用している海士町の方々に、Deloitte Digitalは以下のような質問をさせていただいた。そのコメントを紹介し、本レポートのまとめとしたい。

<デジタル化が進んでほしいところ>
  • 島にいながら、球場で応援しているような感覚になれたら嬉しい(男性/10代)
  • 担い手が少ない職や作業、またそのサポートに向けた活用(タクシー、手工業、船、運輸等)(男性/30代)
  • 学校教育、社会教育、リモート診療、各種申請(パスポートなど)(男性/40代)
  • 災害や医療的なこと(女性/40代)
<デジタル化してほしくないところ>
  • 回覧板など人と人とがかかわるところは残していきたい(必要な無駄)(男性/40代)
  • 島の祭りなど行事的な部分。人と人が触れ合う時間は減らしたくない(男性/10代)
  • お店のデジタル化が進むと地域の人と話ができるという良さがなくなってしまうので進んでほしくない(男性/10代)
  • 人の手が全くかからなくなるようなデジタル化、例えば農業の完全無人化(男性/40代)
  • あえて完全デジタル化せず、一部だけデジタル化することが望ましい(男性/30代)


講演会にてアンケートを実施

Deloitte Digitalは今回、海士町の皆さまの暮らし、リアルスポーツイベントの参加、さらに皆様からのアンケート結果から、離島におけるデジタル化の波、その先の更なる可能性や期待感をあらためて感じ、これはコロナの影響により一層の加速が進むであろう事を感じた。またその一方で、リアルな場でのコミュニケーションや体験は稀少性が増し、その価値の高まりも改めて認識した。海士町ではモノや情報のやり取りはデジタル化に対する期待が高く、ヒトとのやりとりについてはリアルに残していく大切にしていくべきものと、とらえているといえる。これは離島であるからこそ本質的な課題がシャープに浮き上がった結果であり、何もこれは海士町に限った話ではないと考えている。この先、私たちはデジタルとどのように付き合っていくのか、例えばどこをデジタル化し、何をリアルに残し、そこでどんな新しいコトを想像していくべきなのか、海士町との幅広い活動を通じて、引き続き学びを重ね、島の未来へ、日本の未来へ支援を続けていきたい。

プロフェッショナル

青木 健泰/Takahiro Aoki

青木 健泰/Takahiro Aoki

デロイトトーマツコンサルティング合同会社 アソシエイトダイレクター

外資系コンサルティング会社、総合メディア企業を経て現職。カスタマー&マーケティング領域のおいてデジタルエクスペリエンス設計、顧客データ分析&活用など、特に顧客接点のデジタルトランスフォーメーションの支援に強みを持つ。また対象はBtoC企業・BtoB企業と業界横断で幅広くカバーし、加えて官公庁への地域データ活用支援の経験から、地方自治体に対する地域データの基盤整備とその活用を提唱・支援している。

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